コンサート・レポート

日程

1998年12月14日

会場

サントリーホール

指揮者

V.ゲルギエフ

演奏団体

キーロフ歌劇場管弦楽団

曲目

1: Bartok Bela : バレエ音楽「中国の不思議な役人」組曲
2: Serge Prokofiev : 「三つのオレンジへの恋」組曲
3: Igor Stravinsky : バレエ音楽「春の祭典」
extra: Igor Stravinsky : バレエ音楽「火の鳥」全曲版より抜粋

<総評>

 漠然とした感想を言わせてもらえば、最高でした。 これは演奏の上手下手を論じているのではなく演奏会と云う エンターテイメントの出来栄えに対する賛辞です。

 先ず、曲目が物凄い。 「春の祭典」を演奏した直後に「火の鳥」を途中(魔王の狂悪な踊り)からとはいえ十数分もかけて最高の演奏をしてくれるなんて信じ難いことです。
 それ以前の問題として「中国の不思議な役人」という凄い曲を最初に演奏しているのです。 これは曲目を見ただけでも凄いとしか言いようがありません。 実際、18:30開場になった後もしばらくロビーで待たされてしまいました。 その理由は「リハーサルが長引いたため」だと言うのです。 案内人の「曲目が曲目だけに…」というコメントが全てを物語っていると思いませんか?

 勿論演目が凄ければそれで良いと云う訳ではありません。 やはり演奏の質が問題になります。 して、この演奏会に於ける演奏はどうだったかに関する私の感想は 「良い所は良いダメな所はダメ」というしょうもない物です。
 それがどうして「最高」に結び付くのかと云うと上手だったらそれだけで良い と云う訳ではないということです。 例えば大曲の最初の方で調子が悪かった場合、結構がっくり来ます。 それが次第に調子が良くなって来てはっとするような名演奏を聴かせてくれたとしたら どうしますか? 紆余曲折の末に大団演に終る冒険映画を見ているような物です。
 この演奏会に於いては「春の祭典」がそうでした。 最初の方は気合いが入りすぎて空中分解しそうに感じる程でしたが 最後の方は「さすがはゲルギエフ!」と 妙に納得できる演奏でした。

 そして大曲揃いの演目が全て終り、拍手の海の中ゲルギエフが団員を座らせ 「ストラヴィンスキー…ダンス…」とまあ何か言ってアンコールに応えようとします。 その段階で私のような単純な観客は興奮して来ます。 そしていよいよ棒を振ると…なんとこれまた大曲のそれも技術と体力の要る部分ではありませんか。 しかもそれは多少疲れが見えたとはいえ物凄い名演でした。 いや、疲れているにも関わらず情熱で押し切ったと言うべきかもしれません。
 こういったその場のノリと云う物が演奏会の醍醐味ではないでしょうか。 CD等を聴いて感動するのとはまた別の楽しみもあるのです。

<曲目別>

注:このコーナーはどちらかと云えば曲を知っている人向けに書かれています。

「中国の不思議な役人」について
「三つのオレンジへの恋」について
「春の祭典」について
「火の鳥」について

<その他>

 私はサントリーホールで曲を聴くのはこれが初めてでした。 座席は腰痛持ち(当日も朝からかなり痛んでいた)の私でも楽に座れるし、 幅の関係で隣人と肘掛け上でぶつかったりもしません。 音響効果は…評価基準を自分なりに持てる程聴き歩いていないのでよく判りません。 が、pppの時などに何故か高周波(演奏とは無関係なもの)が耳につきました。
 いずれにせよ、自宅のチープなオーディオ環境とは比較にならない 音場の広がりは感じられました。 「をを!こんな音があったのか!」等々普段はわからないような微妙なニュアンスやら微細な音やらが良く聞こえてくるので逆に哀しくなって来たくらいです。

 サントリーホールへは銀座線溜池山王駅で降りて13番出口からまっすぐ行き赤坂アークヒルズの中に入るのが多分良いのでしょう。 しかし、私は13番出口を出たらANA HOTEL TOKYOの手前の坂道を登って行く道を行った方が風情があると思います。
 この道をゆるゆると右に曲がりながら登って行くと登り切った辺りで 車道が左に切れます。そこでふと右側を見ると階段があります。 それはアークヒルズへの広場へと降りて行く階段で、広場の上を跨る二階部分へ 降りることが出来ます。 広場には噴水やらがあるのですが、この階段を降りるコースを取ると ちょっとした眺めが望めます。
 強いて云えばその二階部分から広場へ降りる階段とエスカレーターの付近に行くと センサーが働いてエスカレーターの乗り方講座を始めてくれるのが ちょっとうるさいです。


戻る